ロボットと会計

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取締役会を極力減らそう……監査等委員会設置会社とは?

監査等委員会設置会社について実務で触る機会があったので調べたことを書き留めようと思う。

そもそも監査等委員会設置会社とは

監査等委員会設置会社は、2014年の会社法改正により、新たに選択適用可能となった機関制度だ。
現状選択できる制度は、以下の通りとなる。(監査役設置会社監査役会設置会社はわけて記載しないのが普通だけど…)

法第2条各号
九  監査役設置会社 監査役を置く株式会社(その監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがあるものを除く。)又はこの法律の規定により監査役を置かなければならない株式会社をいう。
十  監査役会設置会社 監査役会を置く株式会社又はこの法律の規定により監査役会を置かなければならない株式会社をいう。
十一の二  監査等委員会設置会社 監査等委員会を置く株式会社をいう。
十二  指名委員会等設置会社 指名委員会、監査委員会及び報酬委員会(以下「指名委員会等」という。)を置く株式会社をいう。

改正以前まで、委員会等設置会社と呼ばれていた機関制度が「指名委員会等設置会社」に名前が変更されている。 リサーチすれば間違いなく名称変更の理由は探せるだろうけど、監査等委員会設置会社と名称を混合するからだろう。

監査等委員設置会社の設置要件は…?

監査等委員会取締役の人数は最低4名必要となる(監査等委員3名・代取1名。)。

法第331条 6項
監査等委員会設置会社においては、監査等委員である取締役は、三人以上で、その過半数は、社外取締役でなければならない。
法第399条の十三 3項
監査等委員会設置会社の取締役会は、取締役(監査等委員である取締役を除く。)の中から代表取締役を選定しなければならない。

監査等委員会設置会社の特徴は、取締役会決議事項を極力減らすことができる点にある。
社外取締役が取締役会の過半を満たす場合、"重要な財産の処分及び譲受け""多額の借財"などの重要な業務執行に該当することであっても、取締役への委任が可能になる。

どういう会社の場合、選択すべき?

以下のような特徴を有する企業は、監査等委員設置会社がハマると思う。
Equityによる調達の結果、大会社に該当するようになったベンチャー企業などが、上記に該当すると思う。
(周りに会社法に知識がない場合、メリットを説明して導入までもっていくのは難しいかもしれないけど)

  • 迅速な意思決定をしたい。
  • 取締役会の開催に関する実務が煩雑になった
  • 投資家つながりで、社外取締役は調達可能

もう少し抽象的な言葉を使うと、「取締役会の開催コストが高い企業」となるのかな。

メモ

以下に列挙する事項以外は、原則、取締役に委任が可能になる。

399条の13 5項各号 内容
一 第136条又は第137条第1項の決定及び第140条第4項の規定による指定 譲渡制限株式の譲渡承認請求に関する決定
二 第165条第3項において読み替えて適用する第156条第1項各号に掲げる事項の決定 会社が市場取引等によって自己株式を有償取得する際の決定
三 第262条又は第263条第1項の決定 譲渡制限新株予約権の譲渡承認請求に関する決定
四 第298条第1項各号に掲げる事項の決定 株主総会の招集事項の決定
株主総会に提出する議案(会計監査人の選任及び解任並びに会計監査人を再任しないことに関するものを除く)の内容の決定 株主総会に提出する議案の内容の決定
六 第365条第1項において読み替えて適用する第356条第1項の承認 競業・利益相反取引に関する承認
七 第366条第1項ただし書の規定による取締役会を招集する取締役の決定 取締役会を招集する取締役の決定
八 第399条の7第1項第1号の規定による監査等委員会設置会社を代表する者の決定 訴訟における会社を代表する者の決定
九 前項第6号に掲げる事項 役員の責任の一部免除の決定
十 第436条第3項,第441条第3項及び第444条第5項の承認 計算書類の承認
十一 第454条第5項において読み替えて適用する同条第1項の規定により定めなければならないとされる事項の決定 中間配当の事項の決定
十二 第467条第1項各号に掲げる行為に係る契約(当該監査等委員会設置会社株主総会の決議による承認を要しないものを除く)の内容の決定 事業譲渡等の契約の内容の決定
十三 合併契約(当該監査等委員会設置会社株主総会の決議による承認を要しないものを除く)の内容の決定 左記の通り
十四 吸収分割契約(当該監査等委員会設置会社株主総会の決議による承認を要しないものを除く)の内容の決定 左記の通り
十五 新設分割計画(当該監査等委員会設置会社株主総会の決議による承認を要しないものを除く)の内容の決定 左記の通り
十六 株式交換契約(当該監査等委員会設置会社株主総会の決議による承認を要しないものを除く)の内容の決定 左記の通り
十七 株式移転計画の内容の決定 左記の通り

今日の結論

実務上取締役会開催は骨が折れるので、それが省略できるのは嬉しい…