ロボットと会計

ロボティクス・会計など、普段から考えていることを形に残すためのブログ

クラウドサービス・SaaS系ソフトウェアの会計処理

クラウドサービスやSaaS系のソフトウェアの制作会社に関する開発費用の取扱についてまとめた。 会計基準が従前定めている、販売用

A. Documentの対象範囲

ネット経由でサービス提供するソフトウェア全般、すなわちSaaS,ASP,クラウドサービスに関する開発研究費・制作費

B. 取引ごとの判定

サービス提供前に生じた活動

1. サービス提供目的のソフトウェア開発

定義:新製品に係るソフトウェア開発費用

概要
開発に伴い、そのソフトウェアの収益獲得が見込まれるか、収益計画・投資計画の策定が求められる。収益獲得が確実と見込まれる場合、それ以降の制作費は資産計上が求められる。

よって、開発全行程にかかる原価は、以下の2つで会計処理が分かれることになる。

  • 収益獲得が確実と見込まれるまでに生じた原価
  • 見込まれた後から、製作が完了しサービス提供するまでに生じた原価
1-1 収益獲得が確実と見込まれるまでに生じた原価

収益計画・投資計画策定のために、開発費用・開発後の運用費の見積もりが必要となる。見積もり策定に必要となる「設計」に掛かる原価は、この区分に含まれる。 この期間に生じた原価は、会計上の「費用」区分に計上する。

  計上区分:研究開発費として、「販管費」に計上
   税務上:試験研究費として、税額控除の対象となる

1-2 サービス提供するまでに生じた費用

収益獲得が見込まれた後、サービス提供までに生じた開発に掛る原価は、会計上「資産」として計上される。 サービス構築中はソフトウェア仮勘定で計上し、サービス提供開始時にソフトウェア勘定へ振替える。

ソフトウェア勘定は、計上から5年以内の期間で定額法にて償却される。 なお、償却方法は「市場販売目的のソフトウェア」の方法に準じて、見込販売数量や見込販売収益に従って償却することも可能である。

構築中に、当初見込んでいた収益性が低下したと見込まれた場合は工事損失引当金の計上が必要になる。

 計上区分:ソフトウェア勘定として、「無形固定資産」に計上
 償却費用:売上原価を構成する減価償却費として、「製造原価」に計上
  税務上:試験研究費に該当する費用が資産として計上されている場合、償却費計上時に、償却費に含まれている試験研究費に該当する部分は税額控除の対象となる。

2. 試作品製作費用・新製品に関する調査費用

定義:新製品開発に伴う試作品を作成するための費用・新製品の開発方法や新技術に関する調査費用

→ 1-1 に準じて処理

3. 新しいサービスの調査費用・新技術の習得費用

定義:サービスの市場調査費用や、技術習得のために支出した費用

直接製品開発工程に直結しない費用は、会計上、販管費に該当する。 提供するサービスの競合調査に掛る費用(市場調査費)や、新技術習得のための研修費用(研修費)が、この項目に含まれる。

 計上区分:研究開発費(もしくは他の科目)として「販管費」に計上
  税務上:試験研究費に該当しない

サービス提供後に生じた活動

4. 修繕費用・機能維持費用

定義:
  修繕費用 維持・保守を目的とした費用
機能維持費用 契約で定められたサービスを提供するために必要な軽微な改修費用

ユーザーに、契約で定めているサービスを提供するために必要な作業に掛る原価が、この項目に含まれる。また、「著しい」と認められない機能改善についてもこの項目の処理に従う。

 計上区分:発生した取引に応じた科目として、「製造原価」に計上
  税務上:試験研究費に該当しない

5. 機能追加・大幅な機能改善に伴う開発費

定義:既存のソフトウェアに、機能追加・大幅な機能改善を行う際の開発費用

収益の新規獲得を目的として行う、既存のソフトウェアに対する機能追加・機能改善に掛る開発費が、この項目の対象となる。 サービス提供目的のソフトウェア開発と同様、収益計画及び投資計画を策定の上、収益獲得が確実と見込まれた場合、それ以降に生じた制作費は資産計上が求められる。 会計処理は、「1. サービス提供目的のソフトウェア開発」に準じる。  

期中管理

資産として計上されたソフトウェア勘定は、減損会計基準の対象となる。 キャッシュフローを生成すると考えられる最小単位を考慮したグルーピングにより減損の判定がされる。

減損の兆候ありと判定された資産グループに対して、 将来CFの見積もりを行い、割引前CFの合計額が簿価を下回る場合、 簿価を回収可能価額まで減額する必要がある。